2024.04.16 国内IT・新興企業から「歓迎」広がる オープンAIの日本進出 

記者会見で撮影に応じるオープンAIのブラッド・ライトキャップCOO( 左)とアナ・マカンジュ副社長(右)、日本法人の長崎忠雄社長(中央)=15日、東京都千代田区

 対話型生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を開発した米オープンAIが15日、アジア初の拠点を東京都内に開設し、日本法人「オープンAIジャパン」を立ち上げた。日本進出に合わせて、処理速度を3倍向上させた日本語特化型の「GPT-4」も発表。日本語特化型の生成AIの開発競争が国内でも激しさを増す中、オープンAIの日本進出に対し、国内のIT企業やスタートアップからは歓迎の声が広がった。

 全従業員が実業務でチャットGPTベースの生成AIを使える環境を整えている富士通の執行役員EVP、岡本青史・富士通研究所長は「日本法人開設は、日本のAIの人材育成や研究開発の進展への寄与が見込まれる」と歓迎。富士通が提供するAIプラットフォーム「Kozuchi(コヅチ)」との連携によって「AIの社会実装を一層加速し、豊かで持続可能な社会の構築への貢献につなげたい」と期待を込めた。

 NECの生成AI専門家チーム「Generative AI Hub」の千葉雄樹シニアディレクターは「グローバルな影響を及ぼすオープンAIの日本進出を通じて、日本の生成AIの活用を通じた変革が加速するのではと、同じ業界にいる身として期待している」と指摘。NECは、オープンAIの生成AI活用をクラウドサービス「Azure(アジュール)」上で展開するマイクロソフトとの協業を通じて進めており、「NEC独自開発の生成AI『cotomi(コトミ)』とともに、さらなるビジネス拡大を目指していく」と語った。

 IoTのシステム開発を手がけるスタートアップのMODEは、クラウド型IoT基盤サービスにチャットGPTを組み込んだアシスタント機能を提供する。シニア事業開発マネージャーの道間健太郎氏は「オープンAIの日本法人設立はスタートアップ企業にとって大きなチャンス。この動きが日本の生成AI市場に新たな刺激をもたらし、スタートアップがさらに革新的なアプローチを追求する機会を広げる」と期待。日本国内でのサポートとリソースの増強によって「技術革新が加速し、小規模ながらも積極的に市場に挑戦していく私たちの活動が大きな推進力を得る」と力を込めた。

 情報システムに詳しい東京大学大学院情報理工学系研究科の江﨑浩教授は「日本の産業が刺激を受け、AIの研究開発が加速する。日米のエンジニアの技術交流も活発化し、日本からグローバル人材を数多く輩出するきっかけになる」と評価する。

 世界で生成AI開発をリードしてきたオープンAIが日本市場を席けんする懸念については「守りに入って内向きな志向になっては国力が減退する。むしろグローバル人材が育成されてIPO(新規株式公開)する新興企業が増えるのではないか」と市場活性化に期待した。

 生成AI開発をめぐっては、米IT大手各社が日本での事業展開を強化している。マイクロソフトは今後2年間で約4400億円を日本向けに投資する計画を打ち出したほか、アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)は27年までの5年間で約2兆3000億円を投資する方針。グーグルも1000億円を投じてデータセンターや海底ケーブルの敷設を進めている。

 国内でもNECとNTTが日本語特化の大規模言語モデル(LLM)を商用化したほか、KDDIもAI開発のスタートアップを子会社化して生成AIに参入。ソフトバンクと楽天グループも事業化を準備しており、国内外の競争が激しさを増している。

 法人向けのチャットGPTについては、既にダイキン工業や楽天、トヨタコネクティッドが導入。ビジネスプロセスの自動化やデータ分析の支援、社内報告の最適化などに活用されているという。