2024.04.20 早くも夏の気配 ルームエアコンの点検大丈夫? 900万台市場に今年も熱視線
最需要期の7月がルームエアコンの問い合わせ件数が多い(出所:富士通ゼネラル)
ルームエアコンは家庭での必需品となり、夏場の熱中症対策に欠かせません。気象庁が18日に発表した5月19日までの向こう1カ月の予報では、全国的に気温が高くなる確率が高いとしています。早くも夏の足音が聞こえてきそうですが、暑くなってからエアコンを稼働して故障に気づく消費者が毎年多いです。そのため、業界団体が4月10日を「4運10(しうんてん)」の日と定めて、夏本番前の試運転を推奨しています。「そんなこと知りませんでした」と素直に感心する新入社員に、エアコン市場に詳しい記者が基本を解説します。
新入社員 最近は猛暑で夏が暑すぎます。エアコンは欠かせませんね。
記者 熱中症は命にも関わりかねないため、電気代を気にしてエアコンを付けず、暑いのを我慢するのは絶対にやめましょう。エアコンも省エネ性が高まっているので、最新機種に買い替えるのも、ランニングコストを考えれば選択肢に入れるべきです。
しかも今のエアコンは、部屋を冷やす、暖めるといった基本機能だけでなく、梅雨時期に生きる除湿や、コロナ禍で活躍した換気、部屋の空気をキレイにしてくれる空気清浄など多彩な機能が搭載されています。リビングで言えば、邪魔の入らない一等地に設置されており、一年中活躍してくれる存在になっています。
新入社員 一年中使えるとなると、市場規模も大きかったりしますか。
記者 洗濯機や冷蔵庫など普及率の高い「定番」といってもいい白物家電の中では唯一、この10年で市場規模が拡大しています。10年ほど前は年間800万台が買い替えを中心とした基礎需要と言われていました。それが近年は900万台と言われるようになり、需要の底上げが進んでいます。
エアコンは、リビングだけでなく、寝室や子ども部屋など複数台設置する家庭が増えています。今年3月末の内閣府による消費動向調査では、2人以上の世帯におけるエアコン普及率は92.5%、世帯当たりの保有台数は2.88台となっています。冬場は石油暖房機の利用が多かった北海道や東北などの寒冷地でも、暖房能力の向上でエアコンが使われるようになってきました。
新入社員 2020年度に過去最高の1000万台を超える規模になったと聞きました。これには特別な理由があったのでしょうか。
記者 良く知っていますね。コロナ禍で在宅勤務が急速に広がり、仕事部屋を急きょ作る必要に迫られたビジネスマンが増えました。そのため、未設置だった個室へのエアコン設置の需要が急増しました。国からの特別定額給付金10万円の使い道としても大きかったです。
20年度をピークに需要は落ち着いていると言えますが、年間900万台前後と以前より高い水準の需要が継続しており、24年度も870万台強の台数が予測されています。
新入社員 エアコンの必要性は分かるのですが、どうしても電気代がかかるというイメージが…。
記者 一般的にそのイメージは強いですね。実際、家庭で約3割のエネルギーをエアコンが消費しています。カーボンニュートラルの実現に向けては、省エネ性能のさらなる向上が求められているのも事実です。
エアコンは、「APF」という指標で省エネ性能を評価しており、27年度からは新たな省エネ目標値が設定されています。
新入社員 APFとはどういう指標なんですか。
記者 APFは「Annual Performance Factor」の略で、「通年エネルギー消費効率」を指します。APFは、一定条件のもと一年間を通してエアコンを運転した際の消費電力1kW当たりの冷房および暖房能力を表します。この値が大きいほど省エネ性能に優れているということになります。家電量販店のエアコンコーナーでPOPなどを注意深く見てみるとAPFを見つけることができ、省エネ性能を数値で確認できます。
新入社員 エアコンメーカーは27年度の新基準に向けて、より省エネ性能の高い製品開発を急がなければならないわけですね。
記者 そのとおりです。同時に、省エネ性能の低い古いエアコンから、最新の省エネ機種への買い替えを消費者に促す必要もあります。エアコンの最需要期は、ボーナス支給の時期とも重なる7月です。年間を通して商戦の平準化も大きな課題で、需要期に設置工事が集中しすぎないよう工夫が求められています。だから早めの購入をエアコンメーカーや販売店が促しているのです。
新入社員 どのエアコンメーカーが人気なのでしょうか。
記者 国内ではダイキン工業やパナソニック、三菱電機、富士通ゼネラルなどのシェアが高いです。大手家電や空調専業のメーカーが強みを発揮していますが、市場が拡大基調ということもあり、生活用品を手掛けるアイリスオーヤマや、ハイセンスやハイアールといった中国メーカーも参入してきています。
日本企業は大手でも年間100万台ほどの生産台数ですが、中国企業の生産量は1桁規模が変わります。原材料費の高騰や為替の問題は付いて回りますが、規模のメリットを生かして購入しやすい価格帯のエアコンを日本市場に投入し、日系大手の牙城を切り崩そうとしているのです。これから迎える暑い夏では、一波乱あるかもしれませんね。