2025.09.29 富士フイルム、30年度にCMPスラリーシェアトップへ、先端パッケージングで2割稼ぐ

富士フイルムの岩﨑常務

 富士フイルムは、半導体ウエハーの表面を平坦にするための化学機械研磨(CMP)スラリーについて、2030年度の売上高を24年度に比べ2倍に高め、現在2位の世界シェアトップを目指す。29日に東京都内で開いた半導体材料事業記者説明会で戦略を示した。

 CMPスラリーはウエハーへの回路形成など前工程だけでなく後工程でも導入を進め、30年度にパッケージング領域で売上高の2割を稼ぐ方針。同日には、銅と酸化膜が混在する「ハイブリッドボンディング」の接合面を平坦化できる製品を投入する意向を明らかにし、大手半導体メーカーで採用を決めた。人工知能(AI)半導体の性能向上に期待が集まる技術だ。

 エレクトロニクスマテリアルズ事業部長を務める岩﨑哲也取締役常務執行役員は、今後の半導体市況について「大きなリスク要因は見当たらず、生成AIの需要はデータセンターからロボティクスなど他分野に向かう」と分析。中国の状況を見つつも、大きな半導体市況の変化の波は当面来ないと楽観も示した。

 富士フイルムのCMPスラリー参入は05年にその製造、販売を手掛ける米Planar Solutionsの出資持分50%を取得したのがきっかけ。製造拠点は米国アリゾナ州、台湾の新竹市・台南市、韓国天安市、熊本県菊陽町、そして26年春からベルギーのズヴェインドレヒトでも稼働を予定する。大手半導体メーカー製造拠点の近隣に設置し、同社が掲げる「地産地消地援」の方針に合致する。

 24年度の売上高は15年度に比べ4.9倍に達した。半導体材料事業全体の売上高も同期間に3.6倍になったが、「事業の成長ドライバー」(岩﨑常務)との形容に疑問はない。24年の世界市場シェアは21%で2位。主要用途である銅配線向けでは主要なCuバルク、Cuバリアの両分野では46%のシェアを持ち1位を誇る。

 今後の成長に向け、ロジック半導体に関しては最先端ノード向け拡販と新たなメタル向けCMPスラリーの開発に取り組む。メモリー半導体に関しては特に生成AI需要で伸びる高帯域幅メモリー(HBM)向けに拡販する。

 さらにパッケージング領域では、ハイブリッドボンディングに加え、複数チップを中間基板で接続するなどの「再配線層(RDL)」の形成や、チップ同士や基板を高密度で接続する突起状端子「マイクロバンプ」で今回の新製品と同じ技術を採用したとしている。 富士フイルムの野口仁シニアフェローは「ハイブリッドボンディング向けの製品をそのまま使える訳ではない」としながらも、多用途への展開に期待を込めた。