2025.10.02 JFEテクノリサーチ、より安全な「酸化物系」全固体電池の試作・評価
JFEテクノリサーチが保有する遊星ポールミル
鉄鋼大手のJFEグループで分析部門を担うJFEテクノリサーチ(東京都千代田区)は、安全性の高い「酸化物系」全固体リチウム2次電池の試作・評価サービスの提供を開始した。電池、材料メーカー、研究機関の要望にワンストップで対応すると打ち出す。
全固体電池は、可燃性の有機電解液を用いないため従来の液リチウムイオン2次電池と比較して発煙、発火リスクが低く、さらに硫化物の固体電解質を用いる「硫化物系」全固体電池と酸化物の固体電解質を用いる酸化物系全固体電池に大別する。酸化物系は大気中の水分に対して安定。実用化に向けた研究が先行している硫化物系に比べてより安全性が高く、定置用蓄電システムや航空宇宙、ウェアラブル機器、医療機器、産業用機器、次世代スマートデバイスなどの用途に期待がある。ただ、電池特性の向上や難易度の高い製造条件の確立など課題は多い。
今回同社が始めたサービスの内容は多岐にわたるが、一例を挙げると、酸化物系固体電解質LLZO系のペレット状成形体をパウダーベッド法で試作する。立方晶系のガーネット型結晶構造を有するLLZOにアルミニウムなど各種元素を少量の不純物として加え、焼結条件などを変更しながら固体電解質ペレットを作り、電気化学特性評価、物理解析、化学分析を行う。
また、セラミックス微粒子とアルゴンガスなどを混合したエアロゾルを低真空下で噴射し、基板上に常温で高速にセラミックス層を成膜するエアロゾルデポジッション法(AD法)を用い、顧客から受け取った正極材、固体電解質から正極-固体電解質界面を形成する。高温焼結工程が不要で、正極活物質と固体電解質の界面で相互拡散や異相形成などが生じる問題の解決が期待できる。
加えて、酸化物系全固体電池の実際の試作と評価も引き受ける。パウダーベッド法やAD法で固体電解質、正極などを試作した後、金属リチウム負極と組み合わせ電池としての性能を評価する。
同社が保有する試作設備は、500ml粉砕容器を2個搭載した遊星ポールミル、最大化圧力1000MPaの温間静水圧プレス(WIP)、最高常用温度1200℃のLLZO焼成用マッフル炉、最高常用温度1050℃の正極活物質焼成用マッフル炉、二軸のニュートンプレス、直径15mmで最大20MPaのペレット成形金型、最大電流値5mAの金スパッタ用卓上クイックコーター、到達真空度70-80Paのエアロゾルデポジッション装置などだ。