2025.10.06 筑波大付属病院で陽子線治療システム2号機が治療開始 日立ハイテクなどが支援

陽子線治療センターの外観(提供:日立ハイテク)

治療室の内部(提供:日立ハイテク)治療室の内部(提供:日立ハイテク)

 日立ハイテクと戸田建設、ビケンテクノ、三菱HCキャピタルの4社が進める筑波大学付属病院(茨城県つくば市)陽子線治療施設の整備運営事業で納入した陽子線がん治療システムが、同大付属病院の陽子線治療センターで治療を始めた。陽子線治療に関する技術やノウハウを持つ4社がコンソーシアムを組み、日本で初めて同治療の施設を更新した。

 今回の事業は、日立ハイテクを中心に4社からなるコンソーシアムが、それぞれの専門性を生かして施設の整備や運営に従事。中でも日立ハイテクは代表企業として、陽子線治療装置の調達業務などを担う。戸田建設は、新陽子線棟の整備業務などを担当。ビケンテクノは建物の総合サービス企業で、同棟の維持・管理業務を務める。リース大手の三菱HCキャピタルは、業務全体の管理・調整業務に従事する。

 具体的には、高精度ながん治療を実現する「スポットスキャニング照射技術」などを搭載し、加速器と治療室2室を備えた陽子線がん治療システム一式を整備。陽子線施設の設計・建設から運転・保守や維持管理まで手がける。さらに、民間資金や経営能力を生かす「PFI方式」を取り入れた。今後も4 社は、がん治療の革新をリードする筑波大のパートナーとして20 年にわたる運営支援を行っていく。

 限られた敷地の中で、診療を継続しながら陽子線治療装置を更新したことも特徴。 既存施設に隣接した敷地に、コンパクトな加速器室と治療室の配置を実現した。敷地に制約がある中で治療システムを更新する際のモデルケースとして注目される。

 また、従来の資金調達方式にとらわれず、SPC(特別目的会社)を組成しない最適なファイナンススキームを構築した。代表企業による一貫したマネジメント体制を確立し、迅速な意思決定と効率的な事業運営を実現できるようにしたという。

 筑波大は世界に先駆けて、1983年から陽子線加速器を用いたがん治療を実践。2001年には日立の陽子線治療システムを導入し、これまでに約8450人のがん患者へ陽子線治療を提供している。