2025.10.08 日立、作業現場の安全性を高めるシステム開発 AIエージェント活用

 日立製作所とインフラ建設を手がける日立プラントコンストラクションは、自律的に業務をこなす「AI(人工知能)エージェント」を活用し、作業現場の安全性を高めるリスク危険予知の支援システムを開発した。変電所でシステムを用した実証実験を行い、有効性を確かめた。リスク対策の質を向上させ、誰もが安全に働ける現場の実現を目指す。

 両社が活用するのは、現場作業での心理的な負担を軽減し現場作業を効率化するAIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy」。さらに、その場にいる作業員にしか把握できない現場を仮想空間上に拡張する「現場拡張メタバース」にリスク危険予知活動のノウハウを組み合わせ、現場の安全性を高めるシステムを開発した。

 具体的には、メタバースで現場をリアルに再現し、中核を担うAIエージェントが過去の類似事例を即時に解析・抽出する。これにより、安全手順の確認や危険個所の可視化にとどまらず、現場ごとの潜在リスクや最適な安全対策も作業者にわかりやすく可視化する。

 作業者は自身の現場に即したリスクを主体的に捉え、質の高いリスク対策を検討できるようになる。日立プラントコンストラクションが顧客の変電所でシステムを活用した実証実験を複数回行った結果、作業者の安全意識が高まり、リスク危険予知活動の所要時間が約20%短縮。さらに意思決定が円滑に進むなど、業務効率化の効果も確認したという。

 労働災害を未然に防ぐためには、リスク危険予知活動の高度化が不可欠だ。ただ、従来の活動は紙やホワイトボードによる運用が主流で、過去の災害事例やリスク情報の活用が限定的であることから、現場ごとの状況に応じた潜在リスクや最適な安全対策の共有が難しく、リスクの見落としや思い込みによる労働災害の発生リスクが残っている。こうした課題を解決し現場の安全性と事業の継続性を高めるためには、誰もが現場のリスク情報を的確に把握し、作業者自身が主体的に作業の安全性を考えられる環境が求められていた。

 日立は4月に発表した新経営計画で、主力のデジタル事業「Lumada(ルマーダ)」を、現場で培ったドメインナレッジで強化したAIで「Lumada 3.0」へ進化させる方針を打ち出した。Lumada 3.0を体現するアプリケーション群とAIエージェントを位置付け、建設や電力、鉄道、製造、保守などの産業分野へ展開したい考えだ。