2019.11.20 【ルームエアコン特集】各社、高級機の提案に一層の力
消費増税後の駆け込み需要の反動は既に緩和されつつある。年末商戦に向けて各社提案に力を入れ、販売に勢いをつけたい考えだ
エアコン市場で下期の暖房提案が本格化している。メーカー各社からは快適性と省エネ性、清潔性に加え、IoT化を図った新製品が続々と発売されており、高級機の提案に一層力が入っている。
今年度上期(4-9月)は、長梅雨の影響があったものの、過去最高の出荷台数を記録するなど、ここ数年で市場の裾野は広がりを見せている。下期においても、寒冷地といった普及率の低い地域での拡販や、リビング以外の部屋への展開が戦略のカギを握る。
日本冷凍空調工業会(JRAIA)の統計によると、上期の出荷台数は630万8000台と前年同期比2.7%増を記録した。これは、データが確認できる1972年以降の記録で過去最高という。
上期は、需要のピークである7月が長梅雨の影響で販売が伸び悩み、その後の動向も懸念された。しかし、8月が猛暑となったことでエアコン需要が急激に伸長。
勢いそのままに8月下旬になると、10月の消費増税前の駆け込み需要がようやく本格化し始め、大型品であるエアコン需要も押し上げた。8月は前年同月比17.4%増の96万台、9月は同31.3%増の73万1000台となり、7月の落ち込みをカバーした。
10月以降は、駆け込み需要の反動もあり、一時的に需要が落ち込んでいる。特に前半2週間は需要の停滞感が強かったが、3週目に入ったあたりから回復傾向が見られるようになった。業界でも「前回(8%増税時)に比べても、駆け込み需要の反動減の影響は小さく、比較的早く回復するのではないか」(エアコンメーカー幹部)といった声が多く聞かれる。
エアコン需要は年間で見ると上期が中心。ただ、近年は下期の需要も拡大している。エアコンの暖房性能が向上していることが、その要因の一つだ。
各社は暖房能力を高めることで、快適性を高めるとともに、北海道や東北といった寒冷地での普及拡大にもつなげることを目指している。寒冷地では石油ファンヒーターや床暖房など暖房能力が高く、足元の暖め性能に優れた製品が選ばれがちだ。逆にエアコンは足元暖房が苦手で、各社の開発ポイントも、いかに足元を効率よく暖められるかに主眼が置かれている。
寒冷地の需要は毎年着実に開拓されている。加えて重要なのが子ども部屋や寝室などリビング以外の部屋へのエアコン導入だ。寒冷地以外のいわゆる標準地では、エアコンは冬の暖房機器として定着してきている。ただ、それはリビング利用が中心で、個室は需要開拓の余地が多く残されている。
個室はリビングと違って部屋が小ぶりだ。その分、設置スペースに制約がある場合も少なくない。各社はそうした状況も折り込み、室内機を小型化した製品を展開している。カーテンレールの上でも設置できるようなサイズにしたり、横幅を小さくして狭小スペースでも設置できるようにしたりと、小型化しながらも付加価値を落とさない製品開発にしのぎを削っている。
基本的に個室のエアコンは普及価格帯の製品が選ばれがちだ。リビングと違い、「就寝時のみ」など使用する時間が限定されているためだ。そうした場合でもメーカー側は、風が直接体に当たらないなどの快適性能を訴求することで、中上位機の提案につなげる工夫を凝らす。家電全体で付加価値の高い製品が求められる傾向が強まっている追い風もあり、個室でも中上位機が売れるようになってきた。
今年度900万台超へ
国内のエアコン市場は、10年度以降800万台を割り込んだ年はない。昨年度には980万台を超える過去最高の出荷台数を記録したばかりだ。この10年程度の間で基礎需要は上がり続け、現在では850万台とも言われている。今年度も900万台を超えるという予想も多く、1世帯当たりの保有台数が増加しているとともに、寒冷地といった普及しきっていない地域での浸透が需要にプラスの影響を与えている。
その分、エアコン市場はメーカー間の競争が激しい。日系大手に加え、外資系メーカーも製品を展開し始めている。ほかの家電品に比べても参入メーカーは多く、IoTを生かした新たな提案も本格化。快適性、省エネ性、清潔性というエアコンに必ず求められる三大要素に加え、IoTにどう向き合うかもメーカーにとっては課題として残っている。
【ルームエアコン特集】目次
●各社、高級機の提案に一層の力
●エアコン暖房浸透 暖房器具の主役に
●パナソニック「エオリア」Xシリーズ
●富士通ゼネラル「nocria」Xシリーズ
●ダイキン工業「うるさらX」
●三菱電機「霧ヶ峰」FZシリーズ
●日立ジョンソンコントロールズ空調 「白くまくん」プレミアムXシリーズ
●コロナ Wシリーズ