2022.04.08 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<82>5G×ディープラーニング=DXになる③

 電気通信大学認定ベンチャーに「早川地震電磁気研究所」がある。『地震は予知できる!』(ベストセラーズ)の著者で、地震予知研究で有名な早川正士博士が代表取締役をされている。

 筆者は8年前に同研究所を訪ねたことがある。先生とは初対面であったが、とても気さくなお人柄で、電波観測による地震予知の話を夜遅くまでしてくださった。

 同研究所では、地震の前兆として現れる電離層擾乱(じょうらん)をVLF(超長波)帯電波の伝搬異常を観測することで、地震との有意な統計的因果関係の存在を研究している。ちなみに、動物の異常行動や鳥の大群移動、地震雲、異常発光などの「宏観異常現象」は、因果関係の説明ができるだけのサンプルを集めることが難しいとのことだった。

有意な「相関関係」

 確かにその頃はまだデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するデジタル技術も第5世代移動通信規格5Gもなく、ビッグデータと深層学習(ディープラーニング)も活用されていなかった。しかし最近は「因果関係」を説明できなくても、ビッグデータから有意な「相関関係」を発見できれば、今までできなかった課題解決ができるようになってきた。

DX:ビッグデータから相関関係を発見・学習するディープラーニングの活用

 そこで、両者の違いを見てみよう。

 まず、因果関係とは「原因」→「結果」の事象であり、科学的根拠が必要とされる。例えば「エンジンがかからない」という結果に対して「バッテリー切れ」「プラグ濡れ」といった原因がある。

 次に、相関関係とは科学的根拠はないのだが、「Aが変化」→「Bも変化」となる関係をいう。例えば、休日のコンビニで「オムツが売れる」→「ビールも売れる」、「〇〇の文字」→「迷惑メール」、「部品の色の変化」→「機械異常」などがある。

 米統計学者エドワード・タフティは「相関関係の経験的に観察された共変動(共に変化)は、因果関係の必要条件だが十分条件ではない」として、たとえ相関関係が有意であっても因果関係の存在を確定するためのさらなる調査・研究が必要だと示唆している。

 それを踏まえ、ウーバーAI研究所の元所長ゲイリー・マーカスは「近似としては良いが完璧には信頼できない」と指摘した上で、「ビッグデータから相関関係を発見・学習するディープラーニングの活用は『画像認識』などのクローズエンド環境では極めて有効だ」と述べている。

特徴を抽出し学習

 例えば、ディープラーニングは多量の画像データを与えると、その中に写る人間や動物の顔や体の特徴を抽出しながら学習する。具体的には、エッジ(色の変化)のある画素の相関関係を発見しながら顔や体の輪郭を学習していくわけだ。

 しかし、画像認識の精度を高めるためにはビッグデータが必要となるため、プライベートクラウドのデータベースに蓄積されている膨大な量の画像や映像データを速やかに処理しないといけない。それには超高速かつ安全にディープラーニングが待つAIシステムへデータを転送する「ローカル5G」が必要となる。

 多量のデータを高速で処理できれば、動物の異常行動による地震予知も夢ではなくなるかもしれない。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉