2020.02.07 【抵抗器特集】一部で回復の兆しだが新型肺炎の影響が拡大

5G向けでチップ抵抗器の小型化シフトが加速する5G向けでチップ抵抗器の小型化シフトが加速する

車載用はシャント抵抗器をはじめ、高付加価値チップ抵抗器の需要が伸びる車載用はシャント抵抗器をはじめ、高付加価値チップ抵抗器の需要が伸びる

 抵抗器市場が厳しい状況にある。中国・武漢で発生した新型肺炎が中国だけにとどまらず世界各国に拡大。経済活動に大きな影響を及ぼしており、現段階では終息のメドが立っていない。

 そうした中で、20年は自動車分野での自動運転を視野に入れた安全系の機能拡充、xEV化といった環境対応などによって電装化率がさらに上昇し、搭載点数の増加が需要を押し上げることに期待。

 さらに次世代高速通信規格5Gの本格運用を控え、インフラの設備投資、端末の新製品開発、IoT、AI(人工知能)などとの融合による多方面への波及効果が新たな市場を形成するといった明るい材料もある。

市場動向

 JEITAのグローバル出荷統計によると、抵抗器の出荷は、東日本大震災、タイの大洪水の影響で低調だった12年を底に自動車とスマートフォン向けを両輪に新たな成長基調に転じている。

 17年度はスマホ向けの成長率が鈍化したものの、自動車向けが安定して伸びたのに加え、産業機器やゲーム機向けの需要が伸びて1560億円に達した。

 18年は秋から減速したものの旺盛な設備投資を背景に、半導体製造装置や工作機械の生産台数が増加。モノづくりのIoT化、ロボット化といった新たな投資などで、産業分野向けの需要が伸びた。

 自動車は、中国での新車販売が低調だったが、グローバル市場では安定した伸び。加えて、ADASをはじめとする自動運転に向かっての機能拡充やxEV化の加速などが、車載用抵抗器の需要を押し上げた。

 こうした市場背景から、18年の抵抗器のグローバル出荷額は、前年比4%増の1628億円に達した。

 ただ、昨秋から米中貿易摩擦などの影響から、中国を中心に設備投資の抑制、先送りが表面化。さらに自動車とともに世界経済をけん引してきたスマホが減速するなど、長期化した電子部品の旺盛な需要にブレーキがかかっている。

 19年における抵抗器市場は後半から回復するとの期待もあったが、米中貿易摩擦問題の長期化などから終始低調に終わった。前年比10%台のマイナスになったもよう。

 20年は半導体製造装置など一部で回復の兆しがある。その一方、中国・武漢で発生した新型肺炎が一気に広がり、世界各国まで影響を及ぼしている。

 グローバル供給基地である中国での生産がストップし、エレクトロニクス産業にとどまらず、ほぼ全ての分野に影響が広がり、世界経済は厳しい局面にある。

 そうした中で、抵抗器市場は引き続き、自動車における自動運転に向けた機能強化による搭載点数増加、xEVの普及に期待。さらに5Gの本格的なサービス開始に伴うスマホの新機種の生産、基地局をはじめとしたインフラ整備への投資が抵抗器需要をけん引することになろう。

さらなる小型、薄型化要求強まる

用途別動向

 スマホをはじめ各種モジュール、さらにIoT関連端末向けでは、小型、薄型化の要求が強まる。特に5G用スマホは、多機能化することから小型、薄型基板への部品実装密度がさらに高まる。チップ抵抗器はより小型化が求められることになる。

 そのため、0603サイズ、0402サイズの需要が伸びる見通しだ。また、チップ抵抗器の搭載点数を削減するために2連チップをはじめとする多連チップも搭載。

 スマホの高周波回路では、高周波帯で高精度抵抗器を要求する。そのため、抵抗値精度や抵抗温度係数などに優れた薄膜チップ抵抗器が用いられる。薄膜チップの場合も小型化が要求され、0402サイズまで小型化している。

 電源回路では、電流検出用途で低抵抗チップが用いられ、金属板チップ抵抗器は小型、ハイパワー、低抵抗を特徴としている。厚膜、薄膜、金属箔、金属板などの抵抗体がある中で、金属板タイプの需要が伸びている。最小サイズは1005サイズ。

 さらにモジュールでは、部品内蔵基板で小型化する動きも見られる。部品内蔵基板の電気的接続には従来のはんだ接続に加え、レーザービアを形成することで、直接銅箔パターンとの接続を行う銅めっき接続方式が採用されている。

 はんだ接続方式の場合には既存の0402サイズや0603サイズなど、一般的な小型チップ抵抗器が使用されることが多いが、銅めっき接続方式の場合は銅めっき電極を形成した専用部品が必要になる。

 現在、厚みが0.13ミリメートルまで極薄化。併せて銅めっき接続方式による高い接続信頼性を実現するため、銅端子電極を採用している。

 今後、IoTを取り巻く各種端末、モジュールの小型化がさらに進展する。そのため、チップ抵抗器に対してより小型化のニーズが高まる。次世代チップとして、既に0201サイズの提案が始まった。

 車載用抵抗器は、相次ぐ新機能の採用によってECUの搭載点数が増加し、多くの用途で様々な抵抗器を使用するようになった。

 特にxEV化でモーター駆動関連のDC-DCコンバータ、インバータ、電池、チャージャ関連のパワー抵抗器は車載分野で需要を押し上げる。

 また、ADASをはじめとする安全系を中心とした機構の強化はECUの搭載点数を増やしている。この動きも抵抗器需要を伸ばす。

 ミリ波レーダー、カメラをはじめとするADAS関連では、それぞれの制御回路を小型モジュール化する動きが見られる。そのため、チップ抵抗器は0603サイズ、0402サイズといった極小チップの採用が始まっている。

 電源周辺部の回路向けは、硫化に強く硫化発生による抵抗値断線を防ぐために耐硫化チップ抵抗器が使用される。硫化ガス濃度が高い環境下で使用された場合の内部電極硫化による断線という現象に対応する。

 自動車用エンジンの制御回路のほか、各種ECUなどでは耐サージチップ抵抗器を搭載。汎用チップに比べて抵抗体の経路が長くなるような特殊なパターンを採用しているものだ。

 電動パワーステアリングや電動ブレーキなど、様々な回路で利用されているモーターへの負担が大きくなっている。

 また、アクチュエータやバッテリ回路も多く、電圧・電流を制御するための電流検出用抵抗器が用いられる。金属板抵抗体が製品ボディーを兼ねるパワー低抵抗チップ抵抗器の大電流、ハイパワー、低抵抗化技術が進展している。

 しかも制御回路では高安定、高精度が求められることから、薄膜チップ抵抗器の需要を押し上げる。

 ヘッドランプの駆動回路、バッテリ周辺、DC-DCコンバータ、インバータなどでは高耐圧チップ抵抗器を使用。これまで複数個の抵抗器を直列に接続して使用されていたが、高耐圧チップによって使用量を削減できるようになった。

 計測機器や検査・評価装置などの高精度を要求する分野は、薄膜抵抗器や金属箔抵抗器の主市場。金属薄膜抵抗器は、厚膜抵抗器と金属箔抵抗器の中間的な位置付けで、抵抗値精度プラスマイナス0.01%、抵抗温度係数プラスマイナス1ppm/度クラスの高精度、高安定を特徴としている。

 金属箔抵抗器は、平面に圧延されたニクロム系金属箔を平滑なセラミック基板に接着し抵抗体とした抵抗器。0.14ppm/度(代表値)という最小抵抗温度係数(TCR)、プラスマイナス0.005%の最小抵抗値許容差、5ppm/年と非常に優れた長期安定性を特徴としている。

 半導体製造装置や工作機械、さらにはロボットなど産業機器向けの抵抗器では、特に高電圧、大電力化に向けた抵抗器が使用される。抵抗エレメントは小型チップ抵抗器とは異なり、巻線抵抗器、酸化金属皮膜などが用いられている。

 安全性、信頼性を強化するために、ヒューズ内蔵タイプのパワー抵抗器も用意。モーター制御関連では、電流検出用抵抗器が用いられる。小型、ハイパワー、大電流対応などの技術が進展する。

【抵抗器特集】目次

●一部で回復の兆しだが新型肺炎の影響が拡大
●KOA 金属板タイプのシャント抵抗器 幅広い抵抗値範囲持つ
●北陸電気工業 耐サージ高電力チップ抵抗器 特殊な保護材料など採用
●釜屋電機 車載向け高付加価値チップ抵抗器充実
●ツバメ無線 可変抵抗器 超薄型ロータリーなど揃える
●フラット電子 チップ形金属薄膜ネットワーク抵抗器 電極構造にU型追加
●日本ファインケム 高抵抗チップ抵抗器「HCタイプ」 1005サイズで150GΩ実現
●旭工芸 8ミリ幅キャリアテープ 超小型チップ用の受注拡大