2020.02.18 【オフィスソリューション特集】商業印刷 進むデジタル化

成長分野のデジタル商業印刷市場への参入も相次ぐ

様々な商品への印刷が容易なデジタル印刷様々な商品への印刷が容易なデジタル印刷

 商業印刷や産業印刷分野でデジタル化が進展している。

 現在主流のオフセット印刷のデジタル化は、今後急速に進む見通しで、事務機各社ではオフィス市場のデジタル化とともに、印刷市場のデジタル化に向けた戦略を加速させている。

 市場のデジタル化率はまだ大きくはないものの、2桁成長を続けている。複数メーカーの新規参入もあり、市場も活発化。メーカー各社では、製品戦略の強化の一方、印刷ワークフローの自動化、効率化など印刷経営まで踏み込んだ提案に力を入れる。

 オフセット印刷が中心の商業印刷市場で、デジタル化が進んでいる。デジタル印刷は、オンデマンドで大量印刷から少量印刷まで柔軟に対応できるのが最大の特徴。昨今、デジタル印刷の画質は、オフセット印刷とそん色がないところまで高画質化が進んでいる。

手間をかけずに

 オフセット印刷では製版・調色・校正に時間や費用がかかるという課題があるが、デジタルプリンタはその課題に対し、印刷の手間/コストをかけずに、印刷物の付加価値を向上させることができる。

 消費者ニーズの多様化が進み、短納期で必要な部数だけ印刷が可能なオンデマンドプリントの価値が高まっている。

 また、印刷業界の経営面からもデジタル化は求められている。人手不足の問題は、同業界にとって他業界以上に深刻と言われる。人手がかかっていた業務の自動化などにより、業務の改善を図ることで、人手対策や収益性の改善が期待されている。

事業戦略を加速

 印刷業界最大のイベントの一つ「page2020」が5-7日に東京都内で開催された。参加企業は過去最多の166社。33回目となる今回のテーマは「デジタル×紙×マーケティング for Business」。

 印刷業界もアナログからデジタルへの大きな転換期を迎え、自動化を取り入れたワークフロー、ITやAI(人工知能)など、デジタル技術を活用したクロスメディアへの対応が焦点の一つとなっていた。

 こうした市場の大きな変化を捉え、事務機各社では、商業印刷分野への事業戦略を加速させている。

 各社では、製品戦略と同時に印刷業務のワークフローの改善や印刷業そのもののビジネス拡大を提案する。

 富士ゼロックスの鈴木孝義グラフィックコミュニケーションサービス事業本部マーケティング部部長は「印刷業界のデジタル化、見える化、業務の効率改善を目指す動きが本格化してきた」と見る。

 そして「印刷のワークフロー全体を統合管理することで、工程の見える化で経営自体の改善につなげる」と強調する。製品面では、ハイエンドプロ市場向け「イリデッセ プロダクション プレス」が全世界各国で好調で、中でも日本は2桁の伸び。

 業界初の1パス6色のプリントエンジンで複数の特殊色を一度に印刷、新たなデジタルプリンティング市場の創出に寄与している。

 また、統合型ワークフローソフトウエア「プロダクション コックピット」を提案。印刷のワークフロー全体を統合管理することで、工程の見える化を実現している。

 リコー/リコージャパンは、商業印刷業経営者が印刷業の方向性やビジネス拡大を図っていくための施策などを考えていく新組織として「ナレッジ シェアリング フォーラム」を発足させた。同フォーラムには、商業印刷業37社の経営者が参加している。

 同社の武田健一常務執行役員産業ソリューション事業本部長は、商業印刷業界を取り巻く環境について「少子高齢化による労働人口の減少や働き方改革が広がる中で、AIやIoT、RPAといった最新のデジタル技術を活用した生産性向上は、企業にとって大きな課題。

 特に中小企業では人手不足が深刻な状況となっており、印刷業においても印刷の前工程・後工程を含んだ、ワークフロー全体の効率化による生産性が求められている」と話す。

 コニカミノルタ/コニカミノルタジャパンは、オフィス市場向けに、自社実験に基づく働き方改革〝いいじかん設計〟ソリューションを提案している。

 印刷業界向けにも、〝いいじかん設計〟ソリューションを提案、プリント作業工数の削減、プリントワークフローの効率化を実現するソリューションに注力する。

 「印刷業界も、高齢化や人材不足などの問題を抱え、専門スキルの継承などが課題となっており、印刷業者の経営戦略にまで踏み込んだ提案」に力を入れる。

 コニカミノルタジャパンは、昨年末に東京都内で印刷業界を対象に「Accurio Value Seminar」を開催した。印刷業界は、デジタル印刷化が喫緊のテーマとなっており、同セミナーでは有力印刷業者を招き、印刷業界の現状、課題解決など「印刷会社の視点」で、これからの経営の在り方などが取り上げた。

 キヤノンマーケティングは、page2020でも協働ロボットアーム連動により自動無線とじを実現する統合ジョブ管理システムを提案。同社は、オセ(オランダ)との連携を強化しているが、今年の1月からオセホールディングの社名を「キヤノンプロダクションプリンティング」に変更、連携を一層加速させている。

 オフィス事業から商業印刷分野へ新規参入するケースでは、京セラドキュメントソリューションズが、商業用インクジェット事業に参入を表明した。

 同社は新開発のインクジェットプロダクションプリンタ「TASKalfa Pro 15000c」を3月から国内投入する。page2020でも初出展し、注目を集めた。

 伊奈憲彦社長は「商業印刷における個々のカスタマイズ、オリジナルの大量印刷需要に対応していく」と、新規参入の狙いを語る。TASKalfa Pro 15000cは、既に海外では販売の実績を挙げているが、国内では直販とともに、印刷機器商社との連携を強化、商業印刷市場でのビジネス拡大を図っていく。

 理想科学工業は、プロダクションプリンタ市場向けの高速インクジェットプリンタの新ブランド「VALEZUS(バレザス)」を展開する。

 19年秋から新ブランドとして、最初の製品となる毎分320ページの高速カット紙プリンタ「VALEZUS T2100」を世界各国で順次発売を開始しているが、年内には日本でも発売に踏み切る見通しだ。

【オフィスソリューション特集】目次

クラウドなどと連携し付加価値提案を強化
MPSサービス より高付加価値を提供へ
働き方改革 ITが不可欠 複合機の活用に注目
●商業印刷 進むデジタル化
産業印刷 大きく広がる市場
リコー〝EDW〟を打ち出す 顧客の困りごと解決を図る
富士ゼロックス「ApeosPort-Ⅶ C」シリーズ 低速機など品揃えを拡充
コニカミノルタ A3カラー複合機品揃え強化
セイコーエプソン 複合機市場に本格参入
東芝テック「e-STUDIOシリーズ」が好評、働き方改革をサポート
京セラドキュメントソリューションズ 事業の可能性を引き出す新しいブランディング活動
ブラザー販売  ITソリューション提案に力を注ぐ、印刷需要の高い業種に特化
理想科学工業 世界最速のカラープリンタが国内外で高評価を得る