2025.09.19 【電子部品メーカー/商社 ASEAN拠点特集】日系電子部品メーカー、高付加価値化を推進 車載や半導体関連などに照準

 日系電子部品メーカー各社のASEAN地区現地法人は、自動車や産業機器、ICT機器、半導体関連などの高付加価値分野に照準を合わせた製造戦略や営業・マーケティング活動を強化している。各社は、非民生分野向けやハイエンドな製品の生産・販売比率を高めることで、事業の付加価値向上を追求していく。

 日系電子部品メーカー各社のASEAN地区工場では、かつては日系AV機器を中心とした民生機器向けの生産が高い比率を占めていたが、近年はASEANの需要構造の変化に伴い、生産品目が大きく変わった。

 特にここ数年のASEANでは、日系や欧米系などの外資系自動車メーカーやTier1などの投資が増加し、車載用電子部品の地産地消要求が強まっていることから、日系部品工場でも、車載用部品を軸とした生産能力増強を図っている企業が多い。

 各社は、自動車業界が求める高い品質要求に応えるため、生産ラインの高度化に取り組み、高品質な生産活動に磨きをかけている。自動車業界の国際的な品質基準であるIATF 16949などの認証取得活動にも力を注ぐ。

 ASEANでは半導体産業の集積化も進んでいる。特にマレーシア北部のペナンなどでは、欧米系をはじめとする主要半導体メーカーが数多く工場進出し、半導体の一大市場を形成している。今後も半導体各社の設備投資計画がめじろ押しであり、日系部品メーカーのASEANでの半導体プロセス用部品増産の動きも活発になっている。

 このほか、現地の電力インフラ需要などに対応したパワー系電子部品の生産増強や、ICT端末のASEAN生産シフトに対応した超小型・高性能部品の増強も進められている。

 民生系では、AV機器向け部品の生産比率低下が続く一方、エアコンなどの白物家電/住設機器向けの部品の生産は引き続き重要視されている。

インド市場に関心

 加えて、今後の高い市場成長が見込まれるインド市場への関心も高まっており、ASEAN進出の日系部品各社では、インドへの拠点開設や工場進出準備を含めたリサーチ活動を強化している。特に、インドローカルを含めた現地の自動車産業や二輪車産業などの成長への関心が高まっている。

 数年前までのインドは半導体デバイス工場が皆無で、「半導体不毛の地」とされていた。しかし最近はインドでの半導体工場立ち上げに向けたさまざまなプロジェクトがインド国内各地で計画されており、今後の成長に期待がかかる。

 日系部品メーカー各社は、ASEAN事業の高付加価値化を図るため、製造設備や部材の現地調達率拡大にも力を入れている。部材調達に関しては、まだまだ中国からの輸入部材への依存度が高い工場もあるが、各社はASEAN域内での新たな調達先の開拓や代替部材への切り替えなどを進めることで、部材調達も含めた自己完結型の生産体制の構築を推進する。

現地技術体制拡充

 日系エレクトロニクス商社では、ASEANにおける工場自動化・省力化ニーズの高まりに対応して、現地でのFA・自動化ソリューションの提案を強化しており、そのための現地技術体制拡充に力を注いでいる。