2020.02.18 【オフィスソリューション特集】クラウドなどと連携し付加価値提案を強化

働き方改革が複合機市場の追い風になっている

紙文書の電子化がビジネスそのものを大きく変革する紙文書の電子化がビジネスそのものを大きく変革する

新たな成長のステージへ

 働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)が、オフィス市場への追い風になっている。オフィス機器は、新たな成長のステージに入った。

 事務機メーカー各社では、複合機(MFP)やプリンタなど基盤商品とクラウドサービスなどソリューション連携を強化、付加価値提案を強化する。さらにこれまで培ってきた画像、データ認識技術とAI(人工知能)、IoTと連携させ、市場創出を図っていく戦略だ。

20年、反転の年

 国内の複合機市場は、近年、出荷台数などが伸び悩んでいたが、再び上向き始めている。ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の19年第3四半期(7-9月)の複写機・複合機の国内出荷実績が、前年同期比8.4%増、金額は560億円、同14.6%増となり、久々の高い伸びとなった。

 消費税増税前など特殊要因はあるものの、出荷台数の落ち込みは底を打ち、上昇に転じるタイミングを迎えている。第4四半期(10-12月)までの累計(推定)では、前年並みかわずかばかり上回る可能性も出てきている。「20年は、反転の年」と見る向きもある。

 しかし、既に複合機やプリンタのビジネスは、〝モノからコトへ〟大きく転換してきている。複合機やプリンタの基盤ビジネスの上に、どのようなサービス、ソリューションを提供できるか、新たな価値提案の勝負になってきている。

 企業のDXが加速している。競争優位を得るためにも、企業のDX化は避けられない。経済産業省は「DXレポート」を発表、「2025年の崖」としてDXへ取り組む意義を訴えている。

中小企業に施行へ

 もう一つの大きな動きは「働き方改革」。働き方改革は、大手・中堅企業が先行した。いよいよこの4月から中小企業にも施行される。中小企業の改革も待ったなしの状況になる。

 事務機メーカーにとって、こうした環境の変化は大きなビジネスチャンスと言える。各社では、単にオフィスの生産性向上にとどまらず、新たなワークスタイルの提案を強化している。

 リコーは、提供する価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」と定め、オフィスに加え、現場、社会に領域を広げ、働く人の変革を支援している。クラウドサービスやAI、IoT、さらにRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と複合機を連携させ、人がより人間的な創造性のある仕事に注力できるような環境を提案している。

 富士ゼロックスが提案する新たな価値提供戦略「スマートワーク・イノベーション」も、「繰り返し作業など様々な制約から解放し、誰もが専門性を活用できるセキュアな環境を提供することで、より創造的な働き方への変革促進」を目指している。

 コニカミノルタは、エッジIoTプラットフォーム「Workplace Hub」を日本国内でも本格展開する。5月には、「ワークプレイス ハブ」をより進化させた「ワークプレイス ハブ スマート」を発売する。これによりデータを活用した意思決定などを支援する。

 また、将来的には、様々な人やナレッジをデジタルでつなげ、データの価値を最大化させるデータエコシステムを構築し、ワークプレイスのDXを促進していく。

 「ワークプレイス ハブ スマート」は、複合機とワークプレイス ハブプラットフォームの統合により、複合機の機能とITサービス、IT保守・運用をシームレスに統合したサービスの提供を目指している。

 リコーは、新世代複合機「RICOH IM C」製品群とシスコシステムズのクラウド管理型ネットワークセキュリティソリューション「Cisco Meraki」のワンパッケージでの提供をこのほど開始した。

 オフィスにおけるセキュアなネットワーク環境の構築と、様々なクラウドアプリケーションによる生産性向上を実現するICTインフラ一体型ソリューションを提供していく。

環境対応もテーマ

 環境への対応も事務機メーカーの大きなテーマとなっている。SDGs時代にふさわしいオフィス環境をどう提供していくか。コニカミノルタジャパンでは、本社移転を機に紙文書ゼロに取り組み成果を挙げた。この自社実践をソリューション提案している。

 エプソングループでは、昨年7月からJR新宿ミライナタワーの本社オフィスを環境配慮型のエコオフィスに転換した。同社の紙を再生する乾式オフィス製紙機PaperLabとスマートチャージを連携させ、SDGsの時代にふさわしいオフィス環境を提案している。

 昨年12月までの6カ月間にPaperLabで生成した紙は約70万枚。木材43本、CO₂換算2トン分の削減につなげた。また、インクジェットプリンタで削減した電力量は11万kWで東京タワーを約3・5カ月ともすことができるという。

 東芝テックの「消す印刷」と「残す印刷」を1台に搭載、紙のリユースを実現したハイブリッド複合機Loopsシリーズも、昨年、環境省への導入が実現、今後、自治体への普及に勢いがつくのは必至。

 事務機市場もDX、働き方改革、環境への対応で潮目が変わってきたのは間違いない。

事務機各社 中小事業者向けの展開に力

 事務機各社が、中小規模事業者向けのソリューション展開に力を入れている。「働き方改革」は、大手企業、中堅企業が先行した。20年4月からは「働き方改革」関連法案が、中小規模事業者に本格展開される。

 経済産業省が推進する中小企業・小規模事業者向けの「IT導入補助金」の活用などとともに、IT専任者がいない中小規模事業者のIT支援に本腰を入れていく構えだ。

 人手不足は特に中小規模事業者で大きな経営課題となっており、IT環境の整備、さらに、働き方改革が求められている。

顧客基盤を生かす

 事務機各社は、全国各地にサービス拠点を持ち、企業との密接な関係を構築している。各社では、こうした顧客基盤を生かしたビジネス展開に強みを持つ。

 特に中小規模事業者は、ITの専任者が不在のところが多く、IT環境構築が大きな課題となっている。

 今後、働き方改革が中小規模事業者にも拡大していくこともあり、各社ではソリューションやサービス支援に注力する。

 リコージャパンは、中小企業の課題解決を図るソリューション「スクラムパッケージ」を提供、好評だ。

 お客の抱える業務課題にフォーカスしたパッケージ製品として提供、既に7業種、3業務を対象に100種類以上ラインアップしている。累計販売本数も4万本を大きく上回っている。

 同社は、シスコシステムズとも連携、「Cisco Meraki」の展開で中小規模事業者のネットワーク環境の整備に注力している。

 富士ゼロックスは、安心で快適なオフィスネットワーク構築・運用を支援する中小規模事業所向けアウトソーシングサービス「beatクラウド接続サービス」の提供に力を入れている。社内ネットワークとクラウドサービスをVPN接続し、セキュアなクラウド利用環境の構築・運用を実現する。

 キヤノンマーケティングジャパンでは、IT支援サービス「HOME(ホーム)」を10年前から展開、現在5万5000社以上に導入してきた。

 新たに大幅な使い勝手の向上とBCP(事業継続)対応を強化したハイブリッドストレージの新サービスを提供開始し、「中小オフィスの働き方改革支援」に取り組んでいる。IT管理者が不在の中小事業所に対して、セキュリティ対策、クラウドなどITサービスを提供する。

 コニカミノルタジャパンは、自社実践による知見を生かした働き方改革ソリューション「いいじかん設計」を提案している。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールの導入・活用支援サービスを新たに開始し、中堅中小企業の働き方改革を支援する。

 各社では、今年4月から働き方改革関連法案が、中小規模事業者にも拡大されることへの対応や、IT導入補助金制度の活用などにより、中小規模事業者のIT支援への取り組みを強化している。

【オフィスソリューション特集】目次

●クラウドなどと連携し付加価値提案を強化
MPSサービス より高付加価値を提供へ
働き方改革 ITが不可欠 複合機の活用に注目
商業印刷 進むデジタル化
産業印刷 大きく広がる市場
リコー〝EDW〟を打ち出す 顧客の困りごと解決を図る
富士ゼロックス「ApeosPort-Ⅶ C」シリーズ 低速機など品揃えを拡充
コニカミノルタ A3カラー複合機品揃え強化
セイコーエプソン 複合機市場に本格参入
東芝テック「e-STUDIOシリーズ」が好評、働き方改革をサポート
京セラドキュメントソリューションズ 事業の可能性を引き出す新しいブランディング活動
ブラザー販売  ITソリューション提案に力を注ぐ、印刷需要の高い業種に特化
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