2020.05.26 【LED照明特集】国内出荷、非住宅用は増加 新型コロナの影響、限定的

非住宅分野は、特殊環境に対応するLED照明の拡充が進む

 19年度の照明器具国内出荷台数が前年をわずかに割り込んだ。前年割れは2年連続。17年度を境に照明の国内市場は踊り場を迎えた。

 LED照明の普及は進んでいるが、台数は頭打ち傾向である上、価格も下落していることで厳しさもにじみ出てきた。

 今年度は、1年延期となった東京五輪関連の需要に一服感が出ている上、新型コロナウイルス感染拡大の影響がメーカー各社の業績に影を落とすかどうかも見通しにくい。市場には不透明感が出ており、注視しなければならない。

 日本照明工業会(JLMA)の統計によると、19年度の照明器具国内出荷台数は6981万台。LED照明では住宅用は減少しているが、屋内向け非住宅用は増加している。

 蛍光灯といった従来光源は前年から3分の1程度にまで減った。照明出荷全体に占めるLED照明の割合は99%と、メーカーからの出荷はほぼLEDに切り替わりつつある。

 19年度の国内市場は、今夏に開催予定だった東京五輪に向けた照明需要が盛り上がった。特に景観照明の需要が高まった。

 各所でライトアップイベントなどが行われたことで、「景観照明は前年比150%と好調だった」(岩崎電気・山田智彦上席執行役員)とメーカーの業績にもプラスに働いた。

 また、地方自治体で道路灯や街路灯、トンネル灯などのLED化を進めている。これまでもLEDへの切り替えは進んできたが、ストック(既設照明)需要は多く残されており、LED化はこれからが本番だ。メーカーも案件獲得に向けて動きを強めている。

 新型コロナウイルスの影響は、感染拡大が国内で本格化したのが期末ということもあり、19年度は各社の業績への影響は限定的と見られる。

 東芝ライテックの杉山博昭取締役照明電材事業部長も「19年度での事業へのインパクトは大きくなかった」と話す。

 ただ、一部中国での部品調達などに影響が出て納期が遅れたケースもある。さらに今年4月以降は、感染防止のためにゼネコンも接触を避ける取り組みを強めるなど、社会情勢に応じて照明メーカーの間でも在宅勤務が広がった。

 そのため通常の営業活動ができていない状況がいまだに続いている。官公庁や地方自治体でも、当初照明関連の整備に充てていた予算を新型コロナ関連対策に回す可能性も懸念されており、メーカーにとっても今年度は先の状況が見通しにくくなっている。

 照明は、屋内外で様々な場所を照らす社会にとって必要な設備。半面、施設の建設などの際には導入・設置が後回しにされ、予算上でも削られたりしがちだ。

 特に、従来光源からLED照明への切り替えでは、まだ使えるのであれば従来光源を使い続ける、または価格の安い従来光源の購入に切り替えてLEDは先送りする、といった選択肢もある。

 省エネ性や環境面に対するLEDの価値は社会的に認知されているものの、低価格化が進んだとはいえ、従来光源よりは割高なLED導入をコスト的にためらう傾向は、新型コロナの悪影響として様々な分野や企業で噴出してきそうだ。

 ただ、17年8月16日に発効された「水俣条約」により、21年以降は水銀ランプの生産や輸出入が禁止となる。メーカーも生産を終了し、代替するLED照明の提案を強化するなど、ますますLEDが存在感を発揮する環境になってきている。

 同時に、特殊環境に設置できるLED照明の開発が加速している。例えば、工場や倉庫などで導入が進む高天井用LED照明では、爆発性ガスが発生する可能性のある環境でも使える防爆対応や、高炉環境でも使える高温対応、冷凍庫などの低温環境で使える低温対応などが各社からリリースされるようになった。

 こうした特殊環境ではLED化が遅れている上、大量に出るような照明でもないために付加価値を高めやすい。

住宅分野 IoT化で付加価値提案

 一方、住宅分野は新築着工戸数にも影響を受けている。19年度の新築着工件数は、88万3687戸で前年比7.3%減った。それが住宅分野のLED照明の出荷にも影響を与えている。

 また、シーリングライトや電球などは、家電量販店やホームセンターなどの小売店で購入できる。価格下落の影響を最も受けやすい製品ともいえ、メーカーにとって利益を確保することは簡単ではない。

 しかし、住宅分野では照明のIoT化による付加価値提案が進み始め、スマートスピーカと連携した取り組みも盛んになってきた。エンターテインメント性のあるフルカラーLEDの登場や、スピーカ付きLEDなども需要が高まりつつある。

 住空間のインテリアにこだわるユーザー層が増えたことで、間接照明も需要が増えている。小売店でも後付けで簡単に設置できる間接照明が販売されるなど、ニーズに応える製品群が増えている。

 JLMAは、20年度に住宅分野のストック市場で48%のLED化を目指している。電気工事を伴う設備のLED化に課題が残るが、30年度にLED化率を100%に近づけるためにも、省エネ・長寿命といった基本的なLEDの価値をさらに訴求していく考えだ。

 また、非住宅分野のストック市場では、20年度にLED化率を53%まで高める目標を掲げている。