2025.08.23 スタートアップW杯東北予選、新触媒開発のアジュールエナジーが決勝へ
スタートアップW杯東北予選で優勝したアジュールエナジーCBOの森崎景子氏(左)=仙台市
スタートアップ企業が事業プランを競い合うコンテスト「スタートアップワールドカップ2025」の東北予選が22日、仙台市の東北大学百周年記念会館で行われた。優勝の栄冠を勝ち取ったのは、東北大学発スタートアップで次世代蓄電池向け高性能触媒の開発に取り組むAZUL Energy(アジュールエナジー、仙台市)。同社は、米サンフランシスコで10月に行われる世界決勝大会に進出する。
人工知能(AI)の普及に伴い、GPU(画像処理半導体)を搭載したサーバーを大量に運用できる「AIデータセンター」での電力消費量が爆発的に増大し、電力供給が不安定化するリスクも懸念されている。同社は予選のプレゼンテーションで、こうした課題の解決に新たな蓄電ソリューションで挑む決意を述べた。
蓄電ソリューションで活用する中核技術は、青色顔料とカーボン(炭素)を原料とした触媒「AZUL」だ。赤血球に含まれる「ヘム鉄」の分子構造を模倣したもので、埋蔵量に限界があるレアメタルを使わず高い触媒性能を実現。大電力を瞬時に出し入れできるスーパーキャパシタ(蓄電装置)の容量を高めるとともに、空気を正極として用いる次世代電池「空気電池」の出力を引き上げることができる。
同社CBO(チーフ・ビジネス・オフィサー)」の森崎景子氏はプレゼンで、こうした優位性を生かす蓄電ソリューションのターゲット市場を拡大する戦略について説明。「サステナブル(持続可能)な素材技術でAIに『瞬発力』を与え、その成長を加速する」と力を込めた。世界大会への切符をつかみ取った森崎氏は受賞後のあいさつで、「名誉ある賞を受賞して世界に挑戦できることを非常に誇らしく思っている」と目を輝かせた。
スタートアップワールドカップは100以上の国と地域で予選が繰り広げられる世界最大級のピッチコンテストで、米シリコンバレーを拠点にグローバルに投資活動を展開するペガサス・テック・ベンチャーズが主催。各地の予選を突破した代表企業は世界大会に出場し、100万米ドル(約1億5000万円)に上る優勝賞金をかけて競う。
今回の予選には、約220社の応募企業の中から選ばれた精鋭の11社が集結した。審査の結果、2位は、農作物の生産から販売まで一気通貫で手がけ「儲かる農業」を実現する日本農業(東京都品川区)が選出。3位には、自律的に業務をこなす「AIエージェント」を軸に企業の課題解決を支援するJAPAN AI(同新宿区)が入った。東北予選の優勝企業は、すでに開かれた九州予選と東京予選の勝者とともに、日本代表として決勝戦に臨むことになる。