2025.09.17 【電器店 親子リレー対談】イトデン(愛知県小牧市) 父…伊藤茂会長、子…伊藤大輔社長 イトデンを100年企業にしたい

伊藤茂会長(左)と大輔社長

次男の伊藤啓介店長次男の伊藤啓介店長

6~8組が座れる商談コーナーを設置。家族で来るお客もゆっくり話ができる6~8組が座れる商談コーナーを設置。家族で来るお客もゆっくり話ができる

イトデン本社ビルの外観イトデン本社ビルの外観

本社ビルには創業当時(1973年)の写真を飾っている本社ビルには創業当時(1973年)の写真を飾っている

伊藤会長「安売りはせず即納が基本」

大輔社長「常客から新規客の紹介も」

 1973年に24歳で日立チェーンストール「イトデン」を創業した伊藤茂会長。50年の節目に長男の大輔氏が社長に就任してから1年半。親子2代で築く地域密着型の電器店経営や高い粗利を出す秘訣(ひけつ)、未来への展望を語り合った。

 伊藤大輔社長 イトデン2代目を継ぐことになって気が引き締まる思いだ。企業が持続的な成長をするためには、大切なことがあるよね。

 伊藤茂会長 イトデンは最近粗利益率が49%を超えている。残暑が厳しく、エアコンは高級機種が売れている。安売りはせず即納が基本。明細もきちんと提示し、在庫を豊富にそろえているから受注から1~2日以内に納品できる。地球温暖化、高気密化でエアコンがないと生活できない時代。生活に密着した家電だからこそ困ったらすぐ駆け付ける体制が大事なんだ。

 大輔社長 エアコンは設置工事の比率が高め。個人宅だけではなく会社や自治体からの依頼もあり、評判が良い。「イトデンはとても良い」となじみのお客さまから新規の紹介もあって、ありがたいことだよね。

 デジタル販促も行っている。地元紙にQRコード付き広告を出して、修理や見積もりの問い合わせが増えた。「イトデンに頼めば何でもしてくれる」という認知が広がっている。

 伊藤会長 でも、無料で仕事を受けることはしない。関係を長続きさせるには、きちんと対価をいただくことが大切だ。

 大輔社長 仕事とボランティアの線引きは明確にしないといけない。

 ■売って終わりではない商売

 大輔社長 イベントは年6回開催しているが、最近はマンネリ化している。良いものは残しつつもワンパターンではなく何度も来てもらえる企画を考えたい。

 家電は一度売って終わりではない。例えば、一戸建てを新築したお客さまが家電一式を購入し5年10年と使われる。修理や買い替えまで長い付き合いになる。

 伊藤会長 お客さまとの関係を築いていき、100年続く企業にしたい。創業当時からのお客さまが今も親子で来店される。信用が全てだ。ありがたい。

 若い社員に担当を引き継ぐ時も、気持ちを裏切らないように注意している。朝礼中に水漏れの電話が来て、「会議で遅れてすみませんでした」と社員がすぐに訪問したら感動されてエアコンの注文をいただいたのを見てうれしく思った。当たり前のことだが、頼まれたことを確実に誠実にする、行動で示すことが大切なんだ。

 伊藤会長 〝タダ〟ほど怖いものはない。業界でも無料で仕事をすることが商慣習となっている部分もあり課題の一つだ。

 愛知商組の小牧支部では「家電リサイクル料金表」を作って、お客さまに収集運搬費を提示できるようにした。最近は物価高で値上げせざるを得ない。一人で決められない店主も安心できるようにとの思いからできたもの。強制ではなく単なる目安であり、サービスするかどうかなどは個々の裁量に任せる。お客さまからの信頼感も高まるし、基準があることで提案のバリエーションが広がる。今年6月には支部会員に改訂版を配布した。

 ■店づくり

 伊藤会長 店づくりも進化させている。昔は展示商品数が多く、立ち話だった商談も、20年前から来店客6~8組が座れるスペースを設けて、家族で来店されても良いようにした。

 夢、理想はなるべく人に話すようにしている。350坪の敷地のうち駐車場、収集場、倉庫、店舗入り口、裏口も、ビデオカメラなどで誰が店に来たかの情報が画像と音で分かるようにして、安全に配慮しつつ見える化している。創業時に植えた「イトデンの木」が大きく成長してきた。

 チラシは全て大輔社長の手作りだし、デジタル販促にも力が入っているよね。

 大輔社長 店内掲示、チラシなど広告は自前で作っている。デザインを学校で学んだことはなく独学で勉強した。イトデンと分かる昔ながらの広告として定評があり、この形態を引き継いだ。

 新しすぎるとお客さまがついてこられないけど、デジタルとアナログを融合させていく。ホームページを見て訪ねてくるお客さまも出てきた。ラインでも対応できるようにしている。

 国内のメーカーも厳しい状況と言われ、新しいことに挑戦していかないといけない。

 伊藤会長 そうだよね。日立ブランドを守るには、店の信用が大事。「イトデンなら責任を持って売ってくれるから安心」という信頼がある。製品が安いから、どのメーカーかという声はほとんどないと言っていいのでは。店の姿勢が問われる時代だ。

 大輔社長 新しいことといえば、つながる家電にも取り組んでいる。若い世代には便利だと言われるが、使い方は人それぞれ。高級冷蔵庫や洗濯機も売れていて、付帯工事、トイレやエコキュートの工事も自社で対応できる。補助金の申請も含め、細やかな対応ができるのが強みだと思う。

 イベントを定期的に開催することで店舗に来てもらうメリットがある。カード払いと現金払いのお客さまは半々程度で、支払いの段階でさらに値引き交渉というお客さまはいないよね。

 ■親子で紡(つむ)ぐイトデンの未来

 伊藤会長 夢はたくさんある。100年続く企業にしたい。長男の大輔社長、次男の啓介店長親子で商売できるのは本当にありがたい。孫の夢を応援したい。振り返ればボランティア をたくさんして、人に恵まれてきた。昔はよく怒っていた(笑)が、今は褒めちぎるようにしている。これまで、いい勉強をさせてもらった。人間は心と心の勝負だと実感している。

 組合活動も理事長を長く務められたのも、社員や仲間たちに支えられ、みんなのおかげだと感謝している。大輔社長が就任して1年半がたった。

 大輔社長 父と同じように「一代で興してみろ」と言われても私にはできない。ベースがあり、お手本があるから、やってこれた。リスペクトしている。

 伊藤会長 立派に成長してくれて、ありがたい。真面目な性格だと思う。

 大輔社長 小さいころから〝洗脳〟されていたから(笑)。社長の息子という重圧に押しつぶされそうになったこともある。

 伊藤会長 野球をずっとしてきて根性がある。それに、プロの世界で貴重な経験をしたよね。

 大輔社長 中日ドラゴンズのグラウンドスタッフを経験したのも転機の一つ。星野、長嶋、王という一流も見て、ミスが許されない世界で厳しさを学んだ。小学校の時からけがに泣かされた。今もコーチをしていて、長男も野球を頑張っている。言っておくけど、彼の人生は彼のもの。自分らしく生きてほしい。

 伊藤会長 次を担う人材を育てたい(孫とは言っていない)。そのためにも働きやすい職場づくりを心掛けていて、健康経営優良法人として4年連続認定された。

 最近、53年前に独立のきっかけをくれた友人と再会して感慨深かった。いろいろな人のおかげで今の私があると感謝の気持ちしかない。困った時には助けてくれる人がいつも現れる。そばで支えてくれる人の存在がありがたい。

 最愛なる良き妻と社員、取引先のおかげと感謝している。お互いに支え合いながら100年続く企業にできたらと思っている。

 親子と社員で支え合いながら、地域に根差した電器店のイトデンは次の50年、そして100年へと歩みを進めている。

イトデン プロフィル 1973年イトデン本店設立。87年イトデン桃花台店設立。90年イトデン本社ビル新築、移転。91年サービスセンター設立。99年イトデンパソコン教室設立。2003年建設業許可取得。現在は従業員11人。創業者・伊藤茂会長の主な役職は3月末で全国電機商業組合連合会副会長、愛知県電機商業組合理事長、小牧商工会議所常議員など。 営業時間は午前9時30分~午後6時。月曜、第1・3日曜定休。