2025.11.11 王子、電力インフラに紙の絶縁材、生産能力3倍、AIに限らず29年以降「電力需要増える」
王子ホールディングスのグループ会社、王子エフテックスは中津工場(岐阜県中津川市)で変圧器用セルロース系プレスボードの生産設備を増設する。新設備は2029年4月の営業生産開始を予定し、生産能力は現行の約3倍になる。電力需要が今後も大きく増えると予測する。
同プレスボードはいくつも重ねた湿紙を熱と圧力をかけて乾燥させ、接着剤を用いず最大厚8.0mmに仕上げる。任意の図面に従って加工でき、金型を使ったモールド成形により多様な形状に対応する。超高圧電力用油入変圧器の内部絶縁材料として40年以上の実績があるが、最近は再生可能エネルギー設備の導入拡大、電気自動車(EV)やAIの普及に伴う電力安定供給への投資増加、老朽化した電力インフラの更新を背景に国内外で需要が急拡大しているという。
25年5月に発表した「中期経営計画 2027」で有望事業への経営資本の集中投下による事業ポートフォリオ転換を掲げており、プレスボード生産設備増強も同戦略に基づく。大島忠司最高財務責任者(CFO)コーポレートガバナンス本部長王子マネジメントオフィス専務兼務は「国内外の大小の変圧器メーカーを販売先に想定する」とし、正式な商談は今後となるが手応えを口にする。2025年3月期第2四半期(4~9月期)決算説明会で明らかにした。
国内外で電力消費の伸びの大きな要因になっているAIを稼働させるためのデータセンターについて、北米などで設備投資を過剰とする「AIバブル」の懸念が出る一方、必要な半導体を含む電子部品とその装置を供給する日本の電子産業は持続した成長を予測するところが少なくない。29年以降の予測について、大島CFOは特定用途に限定せず「電力需要は大きく増えていく」とし「分野がどこというよりも電力供給事業会社の設備への対応」とした。同社は今中計で新規投資に厳しい条件を設けたとし、プレスボード設備増設はそれらを満たす最初期の案件。特に収益性に期待しているとした。







