2025.10.08 第一稀元素、SiCウエハーの研磨速度1.6倍に ナノ単位で制御したジルコニア粒子分散液

 第一稀元素化学工業は、パワー半導体基板用SiC(炭化ケイ素)ウエハーの表面研磨材料として、新たなジルコニアゾル(ジルコニアナノ粒子の分散液)「ZSL108」を開発した。ナノ粒子の形状と粒子径を調整し、同社の従来品と比べ研磨速度を約1.6倍に向上。加工時間を短縮可能にした。粒子の粒度分布をより均一にし、研磨のばらつきが少なく表面平滑性も高めた。

 同社の粒子制御技術を生かしてナノ粒子にX字またはT字状に交差し積層する歪な3次元構造を与え、ウエハーとの接触点を多方向に多数形成。摩擦力を増し、ウエハー表面に対する材料除去効率を高めている。

 またナノスケールで粒子の大きさを制御し、分散液中でより均一な粒度分布を実現した。過剰な粗大粒子を含まず研磨時にウエハー表面の微細な傷や凹凸の発生を抑制する。実験ではウエハーが原子レベルの平坦性を実現し、表面に傷がないことを原子間力顕微鏡像や白色干渉計像で観察できたという。

 SiCは高電圧、高温環境で安定して動作し電力損失を抑えられるワイドバンドギャップ半導体の主要材料の一つ。従来のSi(ケイ素、シリコン)に比べ電気に対する耐性を示す絶縁破壊電界強度、電気の動きやすさを示す電子移動度、熱の逃がしやすさを示す熱伝導性に優れる。ただ化学的に安定し「ダイヤモンドに次ぐ硬さ」とも言われるほど硬く、加工が極めて困難でもある。

 一方で半導体基板ウエハーの製造には高い研磨速度と原子レベルの平坦性、さらに表面に傷や欠陥がないことが求められ、研磨材料の性能が加工品質を左右する。研磨材料の切削性が弱いと全体の加工時間とコストが増大し、研磨材料の粒子径や分散状態が不均一になるとウエハー表面に小さな穴、ピットや、小さな傷、スクラッチが発生し、パワー半導体デバイスの歩留まり低下や性能への悪影響につながる。ナノ粒子の形状や粒子径を調整した新たなジルコニアゾルはこうした課題解決につながると期待される。顧客ニーズに応じた材料の調整も可能としている。