2020.03.12 【九州・山口・沖縄産業特集】〝5G〟に高まる期待 需要喚起へ各社取り組み強化

福岡市内の携帯電話ショップで行われている5Gのデモンストレーション

 次世代高速通信規格5Gの商用サービスがいよいよ日本でも始まる。携帯各社のうち、ソフトバンク(SB)は27日から、「ソフトバンク5G」の提供を東京、福岡など7都府県から順次開始する。通信エリアは駅周辺などに限定されるが、福岡市内の携帯ショップでも5G関連のデモンストレーションが始まるなど、需要喚起に向けた取り組みが熱を帯びている。

IoTの切り札に

 5Gのメリットは、現行4Gの100倍の通信速度で、通信時間のずれは0.001秒程度と低遅延が特徴。また1平方キロ当たり約100万台と多数の機器を同時接続できる。

 高速大容量の特性を生かし、個人向けにはスマートフォンやタブレット端末で、視点を自在にできるスポーツ観戦や仮想現実(VR)を用いた音楽ライブ、ゲームを体感することが想定されている。

 一方、産業向けには▽工場内の機器を無線で操作したり、カメラを使って生産ラインの不良品をチェックする▽センサーやカメラで農業機械を遠隔操作したり、作物の生育状況を確認する。医療では、高精細な診断画像を病院などに伝送して、遠隔から医師が患者を診察する--など、生活の利便性を高める様々な活用が期待される。

 5Gはあらゆる機器を通信でつなぐ「モノのインターネット(IoT)」の切り札であり、自動運転や運転補助などモビリティでの活用は、九州でも既に実証実験が行われている。

 先行してサービスが発表されたソフトバンク5Gは、対応のスマホを購入し、対象となる4G料金プランに月額1000円(税別)の基本料を追加すれば利用できる。

 例えば「メリハリプラン」は、アイドルグループのライブやスポーツの試合など、対象の動画サービスと会員制交流サイト(SNS)が使い放題になるほか、月50ギガバイトまでデータ通信が利用可能で月額利用料(2-7カ月目)は3480円(税別)から。5Gスマホの予約も始まっており、シャープ、韓国LG、中国ZTE、オッポの各社製品から選べる。NTTドコモやKDDI(au)なども、近くサービスを公表する予定だ。

速いが、範囲狭く

 ただ5Gには難点がある。現行の4Gが使う周波数帯は数百メガヘルツ-か、1ギガヘルツ-で、都市部や郊外を面的にカバーできた。しかし、毎秒20㌐と通信速度が速い5Gで使うミリ波帯(3.5ギガヘルツ-か、24ギガヘルツ-)は数百㍍の範囲しか電波が届かない。都市部をカバーしようとすると中継局を大幅に増やす必要があり、基地局や設備の整備が急務となる。

 当面は駅周辺やスタジアム、工場内などピンポイントでの普及となり、通信エリアの拡大には数年を要すると見られる。それだけに今後、設備機器やサービスなど関連需要の増大が見込まれ、メーカーなどから期待も高まっている。

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